だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

『お金』と『やりがい』 ②

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前回の投稿では、行動経済学の簡単な説明を書きました。
今回は、実験の話をメインに書いていきます。

前回の投稿はこちら。
kimniy8.hatenablog.com

前の投稿では、善意で行った行動に対してお金で応えられると、幸福度が下がってしまう話について書きました。
善意を例に出した為、『実際の経済と関係が無いだろう』なんて思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、これが結構、関係が深いんですよね。

その他に行われた実験は、作業の『やりがい』とお金の関係について。
だんだんと、実際の経済に近づいてきたのではないでしょうか。

ここで行われた実験は、『シューポス実験』というもの。
シューポスとは、神話に出てくる人物で、ある罪で大きな山の上場に向けて、大きな石を転がしていかなければならないという罰を受けた人物です。
この大石は、頂上付近に近づくとふもとに向かって転げ落ちる為、また最初から転がしていく必要があります。
日本でいうところの、賽の河原の石積のような感じといえばよいでしょうか。
何度も同じことをさせられ続けるという、罰を負った人物の話です。

実験内容はこの人物の刑罰と同じく、人に同じ事を繰り返しさせるという実験です。

実験内容は、レゴブロックのようなものでロボットを組み立ててもらい、1体出来上がると、報酬が支払われれます。
この報酬ですが、1体完成する毎に引き下げられていきます。
これを基本にして、これに別の条件を加えて観察していきます。

グループ1は、報酬の代わりに引き渡されたロボットを、その場に置いていきます。
グループ2の場合は、ロボットは別の場所に移されて、その後は破壊されると告げられます。
グループ3は、報酬と引き換えに聞き取ったロボットを、制作者の目の前で解体して材料に戻します。

実験内容としては、前提条件である完成したロボットと引き換えに報酬を貰えるという条件は変わりません。
グループ1の場合も、回収されたロボットは永久に保存されるというわけではないので、いずれ壊されることには変わりがありません。
違いとしては、ロボットが潰されるタイミングと場所が変わるだけです。

念のために書いておくと、既存の経済学では、1~3のグループの結果は同じになります。
というのも、経済学で重視されるのは、お金だけだからです。
労働の対価として十分なお金が貰えるのであれば、労働者は労働をやめる事はありません。
貰える金銭が労働の対価として低い時に仕事をやめるので、仕事の結果として生まれた成果がどうなろうと、結果は変わらないというわけです。

ではこの実験結果はどうなったのかというと、結果からみると、グループ1よりも2の方が早く仕事をやめ、更に3の方がより早く、仕事をやめました。
これによってわかる事は、人は自分の仕事の成果が目に見える形で残っている方が、より少ない報酬でも仕事を続けるという事です。
逆に、作ったものが目の前で破壊される場合は、『やりがい』そのものが失われてしまい、仕事をする意欲がなくなります。

放送では、この条件とは少し違った形でも、実験が行われました。
仕事の成果が上昇した社員に対し、3つの方法で評価をしました。

1つ目は、ボーナスという形で現金を渡した。
2つ目は、ご褒美という事でピザを渡した。
3つ目は、ほめたたえるメッセージを送った。

会社では、成果報酬という制度がとられているところも多いですし、普通に考えれば、『1』の現金がよさそうな感じがします。
しかし実験結果によると、現金を渡した社員の翌週の成績は下がり、褒めただけの『3』のケースでは、翌週の成績が上昇しました。
ものであるピザを渡した『2』ではその中間の成績という結果になりました。

これの実験は最初の実験よりも、より実社会に近い形の実験ですが、結構驚きの結果ですよね。
資本主義の世の中では、『金こそが全て』といわんばかりに、あらゆるものが金銭に換算されてきました。
そして仕事の評価は、金銭によって行われてきたのですが…
実験では、その金銭を与えると、モチベーションが下がってしまうんです。

不思議ですよね。

また仕事の効率とお金の関係でで、更に不思議な事もあるのですが…
文字数的に丁度良くなってきましたので、今回はこの辺りで。

続きはまた次回に。