だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

すし職人徒弟制問題は 議論する程のものなのだろうか

広告

今回は、最近話題になっている(のか?)、寿司屋の修行と料理専門学校との差についての議論を聞いて思うことを書いていきます。

この話題を私が知ったのは、普段から愛聴しているネットラジオ、『BS@もてもてラジ袋』で取り上げられていたからです。
私の知らない話題を頻繁に取り上げてくれるので、毎回楽しませていただいています。
http://moteradi.com/20160220amoteradi.com

そんな中で取り上げられたのが、この寿司の修行問題。

経緯を詳しく書くと、寿司屋で修業をした場合、魚に触らせてもらえるようになるまでに8年間かかる。
その一方で、すしアカデミー等の料理専門学校に通えば、初日から魚の捌き方を教えてくれる。
寿司を勉強しに行くのに寿司屋に行くのは合理的ではない。
…と、厚切りジェイソンというお笑い芸人が問題提起をし、それに対し、ビートたけしが、『だって河岸(魚市場)に毎日顔を出さなきゃ魚の良し悪しなんか、わかんないじゃん』と意見。
それに対して厚切りは、『調べればいいでしょ?インターネットに書いてあるでしょ?』と返答。

これが話題になり、ホリエモン厚切りジェイソンの意見に同意する様なコメントをしたようです。

私は個人的に、この議論が、何故話題になるのかが全く分かりません。
というのも、厚切りジェイソンの主張の意味が分からないからです。
っていうか、寿司屋と料理専門学校って、同じ土俵で戦っているのでしょうか…
そもそも業種が違うし、議論に発展していることが不思議というのが、私の抱いた印象です。

まず、この議論で完全に抜かされているのが、先ほども書いた業種の違い。
次に、教えを乞う側の立場の違いです。
この2点が最も重要な事なのですが、それを全てなかったことにしている為、議論が成立しているように見えるだけで、実際には議論にもならない事柄なんだと思います。

最初に、業種の違いから見てみましょう。
すしアカデミー等の料理専門学校は、どういう業種でしょうか。
人に技術を教えて、対価として学費を貰う学校です。

その一方で寿司屋はどうでしょうか。
寿司屋は、消費者に料理を提供して、その対価を貰う職種です。

次に、教えを乞う側の立場の違いを考えてみましょう。
料理学校で教えを乞うのは、学費を払っている学生です。
学校側は、対価として学費をもらっているので、落ちこぼれない様、懇切丁寧に説明するのは当然です。
参考までに、話題に出た『すしアカデミー』の学費を書くと、8週間集中コースで91万2千円です。
わずか2か月で90万以上の金をとるわけですから、初日から魚が捌けなければ文句も出るでしょう。

その一方で、寿司屋はどうでしょうか。
寿司屋は、寿司の握り方を学ぶ学生を募集しているわけではありません。
店を運営する為、雑用などをしてくれる従業員を募集しているわけです。
当然、給料も支給されます。
番組で話題に出た、江戸前寿司店「銀座久兵衛」を例に出すと、経験者で技術があるか、見習いかで給料は変わりますが、17万円~40万円が支給されます。
www.kyubey.jp

比べてみれば一目瞭然ですが、料理学校では2か月で90万以上請求されるのに対し、寿司屋では給料が最低17万円は貰えるわけです。
これだけの金額差があるのに全く同じ環境で若者を育成しろというのが、そもそも無理な話ではないでしょうか。
というか先ほども書きましたが、寿司屋が求めているのは従業員であって学生ではないので、比べる事も不可能です。

では、問題をわかりやすくする為に、あまりにかけ離れた条件を、近づけてみましょう。
料理学校に、『貴重な時間を使って料理の教え貰いに来てやったから、一か月当たり17万円よこせ。』といった場合、どうでしょうか。
当然のように、門前払いされるでしょう。

逆に、自分が惚れ込んだ寿司屋に行き、『あなたの味に惚れたので、2か月間、料理を教えてくれないでしょうか! 対価として、91万2千円支払いますから!』といえばどうでしょうか。
寿司屋の大将がその条件をのんだうえで、『まずは皿洗いからだ!』というでしょうか。
2か月で仕上げなければならない為、初日から、魚に触らせてもらえそうではないでしょうか。

つまりこの問題は、技術を教えてもらうのに金を払うのか払わないのかという話で、どちらかが、おかしいという話ではありません。
寿司屋で魚を捌くのに8年かかるのは、単純に授業料を支払っていないから。
こう考えると、授業料を払ってないのに教えてくれる寿司屋の先輩って、結構良い人たちなんじゃないでしょうか。

こういう書き方をすると、『見習いは拘束時間の割に、給料が少ない』と反論する人もいらっしゃるでしょう。
では、こう考えてみればどうでしょう。
拘束時間から考えて、20万円もらうのが妥当なのに、17万円しか貰えないのであれば、『3万円分は授業料として天引きされている』と。
先ほど話題に出した『すしアカデミー』では、3万円だと3日間だけ教えてもらえます。
scareer.blog.fc2.com

1日当たり8時間だとすると、24時間。
寿司屋の勤務が一か月20日だとすると、一日当たり1時間分ぐらい教えてもらえれば、計算的には合いますよね。

つまり寿司屋というのは、体育会系のノリのように見えますが、雑用に対して給料を支払い、教えた分の対価を差し引いているだけで、酷い事をしているわけではありません。
一括で高額の授業料が支払えない若者などは、給料を貰いながら勉強できる為、むしろありがたい制度なのではないでしょうか。

こうしてみると、要は学ぶ側の選択の問題。
学費や卒業後の店の開店資金がないのであれば、飲食業で働いで、給料を貰いながら開店資金を貯める。
既にサラリーマンとして数十年働いていて、金は結構持っている。
第二の人生として一刻も早く飲食店を開業したいのであれば、専門学校で学べばいいだけなんですよね。