だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

映画館の未来について考えてみる

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今回は、映画について考えてみようと思います。
こんな書き出しで書くと、さぞや沢山の映画を毎年見ているのだろうとお思いかもしれませんね。
しかし実際には、私が映画館に足を運ぶのは年に数回程度。
地上波で放送しているものや、DVD等をレンタルしてみるのを含めても、年間で20も見ない程度なので、お世辞にも映画好きとはいえないレベルです。

そんな私が、映画について何を考えるのかというと、映画のストーリーやトレンド等ではなく、映画館での映画鑑賞についてです。

日本の映画館といえば、やたらとマナーにうるさい印象を受けます。
コンテンツ産業なので、映画というコンテンツを無断で録画してネットに流すなどは、論外でしょう。
しかし、その他にも、様々なルールで見る側を縛り付けられます。

話しては駄目だし、大きな音も出してはいけない。
極力、音をたてずに、ひたすら黙って観るのが礼儀。
近くの人が音を出していようものなら、映画そっちのけで睨みつける人も立たいます。

今となっては、この様な鑑賞方法が当然で、観客側はさらなるマナーを求め出しました。
それが、少し前に新聞に投稿されて問題になった、受動ポップコーン問題です。

受動ポップコーンという聴き慣れない言葉ですが、簡単に説明すると、映画館で売られているポップコーンを食べる人の出す音が耐えられないから、食べるのを止めろという主張。
ただ、映画館は基本的に食べ物は持ち込み禁止で、映画館で売られている食べ物に限定して、食べて良いことになっています。
つまり、違法でもなんでもないんです。
さらにいえば、ポップコーンや飲み物は、映画館が利益を上げる重要な商品の一つです。
映画館側としては、是非、飲み物と一緒に買って、飲食しながら見て欲しいと販売しているものです。

それすら許さないのが、受動ポップコーン問題です。

ここで、一つの重要な問題が出てきます。
それは、『ここまで気を使って、わざわざ映画館で映画を見なければならないのか問題』です。

映画といえば、大人一人あたり1800円請求され、3D等の場合は、更に追加料金をかせられます。
仮に4人家族で映画館に出掛けて、子供の為に飲み物とポップコーンを購入すれば、下手をすれば1万円程の出費になってしまいます。
そしていざ、映が始まれば、子供が大きな声を出してマナー違反しないかと、気を配りながら見なけれがならない。

ここまで気を使うなら、DVDやブルーレイを購入した方が、遥かに安価でストレスレスな環境で楽しむことが出来るんですよね。

また、別の角度から見ても、家で観る環境は整ってきています。
4kテレビは、少し背を伸ばせば変える程度になってきていますし、それより安価なフルHDなら、背伸びせずとも買うことが可能です。
5.1chスピーカーやヘッドフォン等も、庶民でも充分に手が届く価格設定です。
映画を見る環境としては、映画館で観るのと大きく変わらない環境は、庶民でも再現する事が可能です。

細かい部分で見れば、映画館で観るほうが優れているのでしょう。
しかし、それを捨ててでも家で見ることの利点は、多すぎるマナーを守らなくて良い事でしょう。

家で見ていれば、喉が渇いた時には自由に冷蔵庫に飲料を取りにいける。
ポテトチップスを食べたところで、誰からも睨まれることもない。
家族間で、声を出して次のシーンの予想をし合う事も、大声を出して手を叩いて笑うことも、禁止されていません。
また、観客が多いからといって、端っこの方でスクリーンを斜めから観さされる様な事も有りません。

こう考えると、わざわざ多人数で映画を見に行く利点は、無いといっても良いでしょう。

また今後は、技術の進歩的に、家庭内の方が優れているという環境が出てくる事も大きいでしょう。
PSVRやOculus Rift等、来年春頃には、VR製品が発売されると云われています。


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このVR製品を使用した映像コンテンツが創られるようになると、『大きな画面で見る』だけが唯一の利点だった映画館は、その砦すら破られることになってしまいます。
というのも、これらのVR製品は、仮想空間に連れて行ってくれる製品です。
目の前10メートル先に100インチの画面がある空間を仮想世界に作ってしまえば、誰でも映画館の一番いい席での鑑賞が可能になってしまいます。

さらにいえば、仮想空間に入り込めるということは、従来とは次元の違った楽しみ方が出来るということです。
今でも、音楽ライブやサッカー中継を映画館で放映し、皆で観賞するというスタイルのイベントが開かれています。
これは、ただ単純に大きな画面を皆で見て騒ぐだけなのですが、VRの場合は、実際の試合会場やライブ会場の空間に入り込め、360度の映像が楽しめます。

つまり技術的には、映画という産業は結構ヤバイ所まで来ているともいえます。

では、映画館は消えてしまうのかといえば…
現状のままでいえば、消えてしまう可能性が高いと思います。
というのも、近い将来、利点が配信日ぐらいしかなくなるからです。
その配信日も、一部のマニアックな作品では、劇場公開とネット視聴とブルーレイ販売が同じ日なんて事もあります。

では生き残るのには何が必要なのかというと、最初に書いた厳しすぎるマナーを緩やかにしていくことだと思います。
単に映像コンテンツを静かに観たいというだけなら、そもそも映画館で観る利点は有りません。
にも関わらず、敢えて映画館で見ようと思うには、『皆で観る』という体験を売り出すしか有りません。

先日放映されたスターウォーズですが、当日にはコスプレをした人が大量に押し寄せ、一種の祭りのようになっていたようです。
おそらく、あの人達は、映画公開日とブルーレイのレンタル日が一緒だったとしても、映画館で見ようと足を運んだでしょう。
それは、映画館という環境が良いからではなく、『この祭りを他のファン、皆と楽しみたい・体験したい』と思ったからでしょう。

先ほど例に上げた、サッカー中継や音楽ライブも同じでしょう。
そこに集う人達は、単に映画館という良い環境で見たかったのではなく、同じ趣味を持つ人達を同じ時間を共有したいから集まっているのでしょう。

つまり、大人数で集まって皆で時間を共有するという体験を得る必要があるということです。

しかし実際の映画館は、受動ポップコーン問題で分かる通り、マナーという見えない鎖でがんじがらめにされた状態での視聴を強制されます。
この慣習を直さないかぎり、映画館に未来はないのかもしれません。