だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

中国の環境問題について 全体的な視点で考える

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ここ最近に開催された観光関連会議のせいか、ワイドショーでは中国の環境問題が盛んに報じられてました。
二酸化炭素を大量に出しているという情報と共に、PM2.5の話をされるという流れが多いですね。
最近は一部の天気予報でもPM2.5の情報を流していたりするので、結構な問題となっていますね。

この問題を受けて、『中国は何をやってるんだ!』という意見をよく聴く聞きます。
しかし個人的な性格として、あまりに一つのものが責められている時には庇いたくなる性格をしているので、敢えて中国よりでこの問題を考えてみようと思います。
という事で今回は、中国の環境問題・意識について、敢えて中国よりで考えた意見を書いていきます。


過去の歴史を振り返ると、産業革命以降、製造分野を受け持つ国の大気汚染は、結構酷い状態になっています。
産業革命が起こったイギリスも、煙突から出る煙によって常時曇っており、霧のロンドンなんて異名を持っていましたよね。
イギリスは雨が多位という印象ですが、雨によって霧が発生して異名がついたというよりも、工業化による大気汚染によって発生したスモッグが原因となっています。

余談になりますが、当時の市民の生活や環境状態を知りたければ、UBIsoftから発売されている【アサシンクリード シンジケート】というソフトをプレイするのが手っ取り早いです。
煙突が立ち並び、テムズ川には蒸気船が大量に行き交う状態を体験できます。




またこれに関連して、ロンドンスモッグなんて事件も有ったようです。
大気汚染によって1万人以上の死者が出た公害事件のようです。

日本でも同じ様な事件として、【四日市ぜんそく】というのが有名ですね。

製造業というのは、基本的に技術の進歩によって生産性が上がっていきます。
しかし、一人の人間が起業して会社を起こした場合、なかなか新たな技術を導入することは難しい。
というのも、設備自体が高価なため、容易に買い換えることが出来ないからです。
買い換えることが出来ないと、新たに事業を始める人が最新設備で新たに起業し、生産する拠点が移動していく。
この繰り返しが、現在まで続いています。

イギリスで起こった産業革命ですが、その設備は数十年で時代遅れとなり、新たな技術を使用した工業地帯の拠点は、新天地で広大な大地があるアメリカに移動します。
アメリカでは鉄の生産がかなり盛り上がり、一気に大国にのし上がりますが、その状態も大戦後に変化します。

アメリカは日本との戦争時に、日本のいたるところを焼け野原にしましたが、その焼け野原となった更地に最新設備を備えた鉄工所が建設されます。
その後は、イギリスからアメリカに拠点が移ったのと同じ様に、アメリカの設備は相対的に劣化し、鉄鋼需要は日本に集中。
日本はその需要に応える形で、大国になりました。

時代が進むに連れて新技術が開発されますが、その時代の流れに企業自体がついて行けない。
新たな技術を導入できない企業は、結果として市場から撤退することになり、全体的な生産拠点自体が他の国に移動してしまう。
ここで重要なのが、工場の拠点が移ると同時に、環境汚染地域も移っていっているということです。
この観点から見れば、中国の国民も、被害者といえます。


次に、環境浄化技術について。
『中国は環境汚染に気を使え!』と主張している人の多くは、日本は環境技術を磨くことで公害から抜け出すことができたんだから、中国も真似しろといいたいのでしょう。
しかし実際には、公害を撒き散らす類の日本の工場自体が中国に移転、もしくは倒産して中国企業に得意先を奪われるなどして、数が減っていったと考えるほうが妥当でしょう。
私はまだアラフォーですが、その私が子供の頃は、周りに工場が結構存在していて、工場排水なども川に流すなどしていて、公害が酷かった記憶があります。

近くを流れる川も、ここ20年程で釣り人を見かける程に綺麗になってきましたが、それより前は、40cm程の水深しかない浅い川なのにも関わらず、底が見えませんでした。
そして綺麗になるにつれて、工場自体も見かけることは少なくなり、工業地帯で育った私の地域は、住宅地になっていました。
つまり、環境技術が進んだ結果として環境が改善されたというより、工場数の絶対値が減ったと考えるほうが自然です。

で、実際の日本の環境浄化技術についてですが…
こちらも、技術が実際にあるのかどうかは分かりませんが、その技術を使用しているのかといえば、疑問です。
というのも、少し前に放送された未来世紀ジパングという番組で、日本が途上国に援助目的で建設している発電所の問題が取り上げられていました。

その発電所は、石炭を燃料にした火力発電所なのですが、発電所が建ってからというもの、大地は汚染されて作物の生えない死の大地になり、水は汚染されて飲めなくなったようです。
具体的には、石炭を燃やした際の粉塵の除去ができていない様で、細かい石炭の粒子が大地に降り積もり、アスファルトの様に大地の表面を固めてしまって、作物の取れない大地になったようです。
また水は、発電所から浄化されていない排水がタレ流しされていて、かなりの汚染が進んでいるようです。
その土地の人は昔から、家畜を育てて食べていたそうなのですが、その家畜が工場の近くの水源で水を飲んだ所、死んでしまったようです。

この汚染は、発電所を中心にかなり広大な面積で進んでいて、発電所を援助された途上国の人々は、『こんなものいらなかった』と口を揃えて主張していました。
営利目的ではない、援助で作った発電所でこの状況なので、日本の作るものが素晴らしいというのも、かなり眉唾ものです。


中国に話を戻すと、中国に誘致された工場は何故建てられたのかというと、単純に製品が安くできるからです。
この状態は、私達の身の回りを固めているものの大半が、何らかの工程で中国が関わっていることからわかると思います。

単純に、安い価格を維持しようと思えば、生産コストを削減しなければ無理です。
コスト削減には様々な方法が有りますが、基本的には製品の品質を落とすというのは最後の方になります。
というのも製品が粗悪品になると、直接、売上に響く可能性が出てきます。
なら何処を落とすのかというと、最終製品に余り影響が出ない部分や、一見知るとわからない部分で手を抜くしか方法は有りません。

『製品はちゃんと作れ』『見えていない部分は手を抜くな』『周りに迷惑をかけるな』『でも金は払わん!』というのは、完全にブラック企業の発想なので、そういう人は考えを改めたほうが良いです。
価格が安いということは、それ相応の理由が有るから安いんです。

『それでも、モラルがある理性的な国民なら、ちゃんと考えて行動する!』と主張する方もいらっしゃるでしょう。
確かにそうかもしれませんね。
しかし、マンションの杭打ち偽装問題からもわかる通り、無理な発注を受けた際にバレない部分で手を抜くというのは日本人も行っているので、日本人である私達が責められるものでも無いんですよね。

そういった意味では、中国の環境問題については【仕方がない】と思います。
ただ、この状態は長くは続かないとでしょう。
最初にも書きましたが、生産拠点というのは一定の間隔で移り変わります。
昔は中国が世界の生産工場でしたが、今は周辺の東南アジアの国にシフトしていってます。
中国に集中した世界中の工場が、ベトナムやフィリピンといった周辺国に移ることで、中国の環境問題というのは他の先進国の様に改善していくのでしょう。

ただそれは、環境問題を抱える国が変わるというだけ。
中国の環境が改善する一方で、ベトナム・フィリピンといった他の国が汚染物質を出すので、地球全体として考えれば何も解決はしないんですけどね。

生産拠点になる国が移り変わっていて、それが今は、たまたま中国だったというだけの話。
もし人々が本当に環境に気をつけたければ、安い製品は買わずに、環境に配慮した企業からだけ買えばよいのです。
それすらせずに、安い製品を提供されるという恩恵だけを受けて、生産者側に『しっかりせぇよ!』というのは、何か間違っているようなきがするのですが、どうでしょうか。