だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

分業化によるデメリット

最近のニュースでは、様々な企業の不祥事が報道されていますね。
東芝の不正会計・フォルクスワーゲンの性能偽装・傾きマンション問題。

一見するとバラバラの出来事のように思えますが、実は、共通する部分が存在します。
それが、分業化です。

分業化とは、仕事という様々な作業が混在している物をカテゴリー別に分けて、それぞれの専門家に任せることです。
一つの製品を作って売るという会社がある場合、設計・製造・営業・経理・経営等の部署に分けて、それぞれを専門的に作業させたほうが、圧倒的に効率が良いですよね。

一つの会社という枠組みから抜けだしても、構造は同じです。
農家が作物をつくり、それをスーパーマーケットが仕入れて、販売する。
販売されているものは、それぞれ別々の職業を持つ消費者が稼いできたお金を使って購入する。

この方法は、一人の人間が生活に関わる全ての作業を自分で行うよりも、遥かに効率的です。
同じ作業でも、専門家がまとめてやることで遥かに短時間、且つ、低コストで行うことが出来る為、人間社会の発展の為には必要不可欠なものです。

この、素晴らしい所しかないように思える分業化ですが、デメリットが無いわけでは有りません。
どんなデメリットがあるのかといえば、情報の偏りと、信用問題です。


まずは、情報の偏りから考えていきましょう。
世の中に存在する仕事を分割し、それぞれの仕事を専門の人に任せる。
これは、自分が携わっている分野とそれ以外とで、その人が有する情報量に格差が生まれてしまいます。

例えば大工さんは、家を作るスペシャリストなので、建物のことに関しては、大抵の事は理解しているでしょう。
しかし、普段自分が食べている食品の事であったり、健康を維持する為の医療関係の知識については、知らないことのほうが多いでしょう。
これは当然の事で、それぞれの仕事を専門職が行うということは、専門分野と他分野との間に、情報の偏りが生まれてしまいます。

この情報の偏りですが、組織が大きくなればなる程、同じ組織内で、情報の偏りが大きくなってしまいます。
例えば、零細企業や個人商店であれば、会社規模や人数が限定されているので、誰がどんな作業をしているのかが、大体想像できます。
その一方で、社員が数万人に及ぶ企業はどうでしょうか。
営業のAさんがどんな形で営業をしているのかを、製造ラインで働いているBさんは知らないでしょう。
更に大きな組織になれば、営業1課が行っていることを2課が知らないなんてケースも出てきます。
経営者である社長が、社員がどんな働き方をしているのかを完全に把握することなんて不可能です。

こんな状態であれば、元請けの社長が子会社に発注している仕事の質なんか、知る由もないでしょう。
この環境で起こりがちなのが、不正と無理な注文です。

先ず不正ですが、分業化して専門職が作業に当たるということは、発注している側は知識がないことが多いわけです。
相手が素人で、細かい部分のことが分からないのであれば、その気になれば、都合の悪い部分を誤魔化すことが可能です。
許容範囲内の誤魔化しなら問題は有りませんが、明らかな問題をなかったコトにするような不正行為も、比較的簡単に出来てしまいます。

次に、無理な注文。
これも環境的には同じで、発注者の無知からくる無理難題です。
納期や技術的に不可能なことを、『なんとかしろ!』という命令だけで、なんとかしようとします。
仮に断ると、『プロなんだから、それぐらいで来て当然』という意味不明な理屈で押し通そうとしてきます。
これは、発注側の無知からくる無理難題ですが、発注側の権力が大きい場合は、受注側が断れないケースも多々有ります。
とはいっても、ムリなものはムリなので、手抜きやデーター改ざんの様な不正行為で、その場を取り繕うしかない。

結果として、問題が発生してしまうわけです。


ではもう一つの、信用問題とは何なのか。
これは、先程の情報の偏りでも書きましたが、分業社会では、基本的には発注側よりも受注側の方が知識が豊富な場合が多いです。
この様な状態では、営業成績欲しさに、客を騙して成績を上げようとする輩が出てきます。

私が、実際に聴いたり体験した具体例を書いていきましょう。
とある不動産業者の営業の話を聞く機会が有ったのですが、スマートフォン等の情報端末を持っていない、または扱えないお年寄りが店舗に訪れた際には、全力で騙しにかかるそうです。
賃貸マンション建設などでは、この手あの手で契約を成立させるのに有利な情報のみを伝え、契約が終わり、建物が立って後戻りできない状態になってから、家賃保証契約の改悪を行っていくそうです。
営業を進める部門と、契約を改悪させて謝る部門に別れていて、完全にシステム化されている様です。
ネット環境を使いこなす様な人物への営業は『厄介だな』と思うそうですが、お年寄りが土地活用で相談しに来た時などは、心の中で『カモが来た!』とガッツポーズするそうです。

もう一つは、私も体験した生命保険会社の営業。
この営業ですが、基本的には不安を煽ることしか言いません。
『仮に手術をして3ヶ月入院して、何百万の請求されたらどうします? その時のために、医療保険を!』っといった具合です。
TVのCMでも、『癌になったら治療費が…』なんて広告を、有名人を使って行っていますよね。

しかし、日本の国民健康保険は優秀。
高額医療費制度というものが有り、一月の医療費の事故負担の上限が決められています。
簡単に言うと、1ヶ月の間に700万のがんの手術をして、その後交通事故にあって別の300万円の手術をしたとしましょう。
この手術が保険適用手術の場合、本人が支払うのは、支払上限である8万円程度に限定されます。
仮に3ヶ月のあいだ治療する事になっても、24万円しか払わなくて良いのです。

民間の医療保険に月に2万円払うのであれば、その分を貯蓄に回すほうが遥かに効率的なのですが、生命保険会社の営業は、こちらから高額医療費制度の事を言わない限り、絶対に言いません。

分業体制というのは、本来は仕事の範囲を限定して、もっとも効率的に社会をまわす為のシステムです。
しかし、このシステムを効率的に運用する為に必要不可欠なのが、信頼関係です。
信用がない場合、情弱から一方的に搾取する構図に変わってしまうんですね。
自己防衛するためには、その分野のことを自分が勉強するしか無い。

結局のところ分業システムは、性善説に基づいた考え方で、誰かが不正を働き出すと、その瞬間から非効率的になってしまいます。
だからといって、分業システムを今更やめる事は出来ません。
ではどうすればよいのかというと、地道に信頼できる人を探すぐらいしか出来ないのではないでしょうか。