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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【ゲーム考察】 ファークライ4 Far Cry 4

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以前にも紹介し、私が初めてプレイしたFPS(一人視点のシューティング)ゲームである、ファークライ4。
他の方のレビュー等を聴くと、設定が風変わりなだけのFPSとして紹介されていることが多いのですが…
個人的には、結構凄いシナリオだなと感心していたりします。





ストーリーとしては、アメリカに住む主人公のゲールを女手一つ育て上げた母親が、『私が死んだら、灰をラクシュマナに撒いてくれ』という遺言を残して他界。
その遺言に従って、ゲールの生まれ故郷のキラットに訪れるという話。
観光気分でキラットを訪れるゲールだが、独裁者であるパガン・ミンが率いる王国軍によって拉致される。
その後ゲールは、贅沢な食事が列ぶテーブルの前で拘束を解かれ、パガン・ミンからテロリストと交戦中だという話を聞かされる。
拉致られた上に、急にそんな話をされて戸惑うゲール。

そんな話の最中に、自身が連れて来られた屋敷にテロリストが襲撃。
混乱に乗じて屋敷を抜けだそうと、屋敷内を探索中、テロリストと鉢合わせ。
驚くゲールに『助けに来た』と声をかけられ、テロリストと共にパガン・ミンのもとから逃げ出す…

というのが、オープニング。
この後の物語としては、ゲールがテロリストからパガン・ミンの国民に対する非情な仕打ちを聞かされ、パガン・ミンの圧政から国民を解放すべく、テロリストと共に活動するという展開になります。
極悪な独裁者の圧政から、国民を開放する。
分かりやす過ぎる程の勧善懲悪で、主人公を操るプレイヤーは、ヒーロー気取りで戦場で大暴れするわけです。

しかし、このゲームの面白いところは、単純な勧善懲悪のシナリオはフェイクで、本当に伝えたい事は、物語の中に巧みに隠しているところなんですよね。

このゲームの本当に面白いところは、カウンター・カルチャーを描いているところです。
先ほどのストーリー説明で、独裁者をレジスタンスが倒す勧善懲悪と書きましたが、ゲームのエンディング後の展開で、レジスタンス側が正義側ではなかったという描写があります。
圧政を強いていた体制側にとっては、国民のレベルが低すぎて、恐怖政治以外に統治の方法がなかった為に選んだ道。
しかしテロリスト側にとっては、体制側を攻めるのに大変都合の良い口実になる。
テロリスト側は抵抗勢力なので、民衆に対して耳障りの良いことばかりを言うが、実際に体制を転覆させ、いざ自分たちが権力を握ると、今まで以上の圧政を強いることになります。

つまり、カウンター・カルチャーというのは、メインカルチャーに対向する事でしか、支持を受けないという、悲しい現実を描いています。

次に、ドラッグと宗教。
(誤解のない様に最初に書いておきますが、私はドラッグ肯定派ではありません。)

主人公のゲールは、アメリカという大都会から、まるで未開の地の様なキラットに来ることになります。
作品内では、キリスト教徒という描写が無かったので、無宗教だと思われます。
しかし、キラットという国に滞在し、殺し合いに巻き込まれるという【非日常感】
そしてストーリーの中で知り合った、フリークス(麻薬常習者)のバックパッカーに薬を打たれる事で得た、神秘的体験。
これらの経験を得て、ゲールは現地の宗教にのめり込んでいくことになります。

正直にいうと、この部分の描写が、このゲームの全てと言ってよいでしょう。
この表現がなければ、ただ単なる殺し合いの、普通のFPSでしかありませんからね。

バックパッカーに不可抗力で薬を数回打たれるのですが、その際には視覚が変化し、物凄く色鮮やかに見えます。
それと同時に、非常にゆったりとした、それでいて陽気な音楽が流れる状態になります。
私自身は薬をやったことがないのでわかりませんが、以前に紹介した本の中には、同じ様な視覚の変化について書かれています。
そして音楽については、ネットなどで調べてみれば、ドラッグとの不快関係性を知ることが出来ます。

有名な例を挙げると、大麻とレゲエ。
サイケデリックとLSD等。

音楽も宗教も非日常感も、自分を通常の状態ではない感覚に連れて行ってくれます。
大まかにいうと変性意識と呼ばれる状態で、それは薬が入り口になる事もあるようです。

そして、これらのもの全てが、カウンター・カルチャーに結びついていたりするんですよね。
60年代に生まれたカウンター・カルチャーの代表的なものと思われる、ヒッピー・ムーブメント。
これも、先ほど挙げた要素を抜きにしては語れないでしょう。

この様なカウンター・カルチャーの要素は、既に当たり前のように存在しているシステムに乗っかって生活している人達にとっては、理解し難いものなのかもしれません。
しかし、その当たり前を疑った先に、新たな思想が生れたりするんですよね。
そういう事を、さり気なくゲーム内に織り交ぜている点が、かなり凄いなと思ってしまいました。