だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

何もない事が強みになる

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先日紹介した本、【楽観主義者の未来予測】では、コンピューターの性能の伸びの速さについて書かれていました。
http://kimniy8.hatenablog.com/entry/2015/06/28/211111
時間との比例ではなく、18ヶ月毎に2倍の性能になり、価格は半分になる。
つまり、同じ価格で指数関数的(18ヶ月で倍、次の18ヶ月で4倍・8倍16倍…)に性能が上がり続けるコンピューター。

では際限なく発展していき、人々の生活は指数関数的に良くなるのかといえば、そこまでは楽観的では有りませんでした。
というのも、技術的な進歩を生かせない問題点が有るからです。
それは、技術を使う側の人間の成長スピードが一定だという事。

これはおそらく、技術の進歩に人間が置いて行かれ、人間側が足を引っ張るという事なのでしょう。
という事で今回は、何故人間が足かせになるのかについて考えると共に、足枷がない状態ではどの様に発展するのかについて考えていきます。


人が足を引っ張る原因の最大の要因は、既得権益でしょう。
ある技術が開発されると、それをサービス化して世間に広めようとする組織が生れます。

例えば、有線電話という技術が開発されると、電話サービスを提供してお金を稼ごうと思う人達が集まって組織化されます。
その組織は国中に通信網を張り巡らせ、カバーできる範囲を広げつつ、顧客を集めていきます。
範囲が広がれば広がるほどに、当然のように組織は大きくなり、そこに権力が生れます。
通信網を握っていて、サービス価格を自由に操れるという事が既に権力ですが、組織として大量の人間を抱えているということもまた権力。
大量の人間を握っているという事は、その量によっては政治にも介入出来るという事。

それ程の権力を得た者は、それを手放そうとは思わない。
もし新技術が開発されて、自分たちの組織が不必要な存在になってしまう可能性が有れば、その技術の導入には全力で反対をするでしょう。
例えば、今はネットを使う事で、電話回線が必要のない通信手段が既に存在します。
消費者側からすれば、に日本中をカバーする様に衛星を打ち上げてもらって、何処でも低価格で接続出来るサービスを提供してくれる方が、生活的には良い。
というか、国レベルではなく、世界レベルでネット用の衛星を打ち上げて、世界中の何処にいても接続できる環境にしてくれた方が良い。

しかしこの様な事は怒らないでしょう。
何故なら、今まで通信網を支配していた組織の人達が、その既得権益を手放すはずがないからです。

同じようなことは、全業種で同時に起こっていると考えられます。
例えばテレビ放送。
一時期、ホリエモンさんがTV局の株を購入して、ライブドアと提携する動きがありました。
結果的には、会計操作という事件を作られて、堀江さんを刑務所に送り込みました。
会計操作自体は良いことでは有りませんが、他の会社も摘発されているような良くある事件。
その額自体も、他の上場企業と比べると少ないものでしたが、結果的には懲役刑。

これも、陰謀論と言われてしまえばそれまでなのですが、テレビ業界というのが既得権益の塊のような業界で、そこに手を出したせいで捕まったという見方もできます。
堀江さんがやろうとしていた事は、簡単にいえばネットとテレビの融合。
テレビというのは、非常に非効率的な配信手段で行われています。
それをネットと組み合わせることで、より便利に効率的に行おうという考えだったと思います。

具体的には、テレビは決まった時間にテレビの前に移動しなければ、観ることが出来ない不便なメディアです。
ネットの動画と比べれば一目瞭然ですが、ネットは公式動画では、公開日が決まっているだけで、何時何処で観るのかは視聴者が決めることが出来ます。
視聴率なんていうのも、テレビの様なサンプル調査という曖昧な調査ではなく、何回再生されたかというのが正確に分かります。
IPアドレスで振り分け、重複分をカウントしない様にすれば、観た人の人数も分かるでしょう。
公開日から一週間の期限を区切って放送をすれば、公開直後に観た人が話題にしているのを見聞きして、後日、自分も観るという選択肢も生れます。

この様に、ネットの方が優れている部分が多いので、地上波デジタル放送にする際にその利点を組み込めば、更に発展していたことでしょう。
しかし実際には地デジ化以降も、テレビは不便なままです。
理由は先程も書いた、既得権益を守るためでしょう。

ある程度の大きくなった組織は、横同士のつながりが生まれ、お互いに利権を守り合う体制が生れます。
先程の例えでいうと、公開日だけをせってして何時でも見れる状態で公開すれば、電機メーカーでレコーダーを作っている組織は困ります。
ネット経由で再生回数や、見ている人の人数を正確に把握すると、視聴率調査会社のビデオリサーチが困ります。
最新技術を導入することによって、既存の組織の多くが必要なくなる為、リストラ対象となる組織は全力で反対することでしょう。
結果として、技術は先に進むが、生活に反映されることはない。


しかし、これらの組織が何もなければどうでしょうか。
後進国で、先進国の基準でみれば文化的レベルの低い国の人達は、そもそも組織をもちません。
つまり、電話などの通信網を構築しようと思えば、最初から国営の無料wifiを国中に張り巡らせる事も可能です。
テレビも同じで、テレビ局なんて大掛かりなものを作らずに、ネットに専門チャンネルをつくり、そこで情報を流すという事も出来ます。

つまり、何もない事が弱点にならず、むしろ利点になる。
これらの何も持たない国は、何もない代わりに、新たな技術を排除しようとする既得権益者も存在しない。
邪魔をする既得権益者が居ないという事は、先進国が100年以上かけて作り上げてきたシステムを、一間内に追い抜かす可能性すら持ちます。

信じ難い話だと思われる方も多いかもしれませんが、この様な流れは過去にも多数存在します。
その一つが、鉄の生産技術です。
産業革命が起こり、その後、鉄の生産が活発になるのですが、時代と共に、鉄の生産技術も進歩することになります。
しかし、一足先に鉄の生産設備を持っていたアメリカやイギリスは、既存の設備を捨てて新たな技術を取り入れることが出来なかった。
その一方、鉄の生産設備を一切持たない日本は、工場を造る際、最新の技術を使った工場を建てた。
結果として、鉄の生産シェアの大部分を米英から日本が奪うことになりました。

これは、日本が優れていたからというわけでは有りません。
単純に日本が一切設備を持たず、鉄の生産組織も無かった事が主な要因です。
その為、最新の設備を導入する際に、抵抗勢力の反対がなかっただけです。


日本も歴史から学び、既得権益者を排除して思考やプロセスをアップデートをしなければ、今まで見下していた後進国の方々に、一夜にして見下されるのではないでしょうか。