だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

目先の数字に支配される政治

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最近の政治を見てみると、先を見据えるという作業が無く、目先のことに捕われ過ぎている様に感じる。
目先の事とは、主に経済指数の事。

『経済的に発展しないと、人は幸福にはなれない』という理念の元に政治を行っているのならまだ良い。
どのルートを通れば最短距離なのかを考え、試行錯誤して舵取りしてくれるわけですから。
しかし実際には、経済を中心に据えているというより、目先の数字にしか興味が無い様にしか見えない。


アベノミクスで実際に起こった現象は、円安・株高です。
この株高ですが、実際に経済政策を行って成功して株高になったのなら、それも良いと思います。
しかし実際に行われたことは、経済政策ではなく、株高政策。

代表的なものは、日銀が金を刷り、その金で日経平均連動投信を買うというもの。
株は需要と供給なので、国策として日銀が買って売らなければ、下がる可能性は当然のように減る。
しかし価格変動資産を日銀資産に加えた結果として、通貨の価値は下がってしまう。


その他にはROEを指標化。
2014年初めから【JPX日経インデックス400】という新たな指数が登場。
この指数はROEが関連してくる。

ROEとは株主資本比率の事で、一株当たり利益÷一株あたり株主資本で計算されます。
このROEを上昇。
本来であれば、企業が優れた製品やサービスを生み出す事で利益を出し、一株当たり利益を上昇させるのが王道です。
しかし、技術的に上昇させることが出来ます。
それは、一株あたり株主資本を縮小させれば良い。
具体的な方法としては、【自社株買い】、つまりは、自分の会社で発行した株を買い取って償却してしまえば良い。

株式会社は株を発行し、他人に経営権の一部を売ることで、お金を得ることが出来ます。
そのお金が株主資本なのですが、金を返して株を買い戻せば、株主資本を圧縮させることが出来ます。
この作業は先程も書いたとおり技術的なもので、会社の業績が一切上昇しなくても、ROEを上昇させることが可能です。
会社が株を買い戻すので、当然、市場では買い優勢となって株価上昇要因になる。


今回の株高を物凄く簡単に説明しようとすると、日銀が株を買って、会社が自社株買いをした。
これだけで説明ができてしまったりする。
実際には、もっと複雑な要因が絡んだり、投資家の思惑なども関係してくるでしょう。
しかし、日銀と企業が買ったまま長期間放置するというのは安心感に繋がる為、株高の大きな要因になっていると考えられます。

似たような事として、GDPの嵩上げ等もあります。
今問題になっている東京の国立競技場ですが、ただの体育設備に3000億近い金を投じるというのは、気がふれているとしか思えない。
では何故、あの様なキチ○イじみた事をするかといえば、金をドブに投じる様な金の使い方であっても、GDPの上昇には寄与するからです。


しかし、これらの政策で問題なのは、これによって市民生活が豊かにはならない事。
やった事は、経済を上昇させる為の策ではなく指数を上昇させる為の策。
株を持っている富裕層や、建設利権に食い込める一部の人達は良いが、一般人には関係がない。
むしろ一般人は、円安と消費税によって物価が上昇したのにもかかわらず、給料がそれに伴って上昇していないので、経済状態はますます悪化している。
結果、二極化は更に進んでしまった。

トリクルダウン理論も聴こえは良いが、民間が再分配を積極的に行うなんて事は聴いたことがない。
そもそも、資本主義化では富める者はより裕福に貧しい物はより貧しくなってきた歴史がある。
金持ちに金を与えたら景気が良くなるという理論は、歴史的に考えても理解が難しい。

この様な理解が難しい理論を持ち出してきたのは、政治自体が『指数を上げる事を最終目標』にしてきたからでしょう。
株式市場というのは、あくまで現状を表す指標の一つでしか無い。
経済が良い時は株が高い事が多く、株価が下がっているときは景気が悪い時が多い。
ただそれだけの相関関係で、景気と株価が完全連動しているわけでもなければ、株価を無理やり上昇させれば経済が確実に良くなるわけでもない。
GDPも同じ、大切なのは中身であって、最終的な数字は目安でしか無い。


今の政治は、その『大切な中身』を軽視し、分かりやすい数字に振り回されているような気がしてなりません。
指数化されたパラメーターをバランス良くする事だけが政治なら、いっその事、人工知能に政治を任せた方が無駄が少なくて良いとすら思えてきます。
政治家の方々には今一度、国民の幸福とは何かを考えて行動してもらいたいものです。