だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

ギリシャ問題の表面しか伝えないマスコミ

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先日のことですが、ギリシャが緊縮財政の是非を問う為、住民投票を行いました。
結果は、【NO!】ということで、緊縮財政は受け入れられないという答えをEU側に突きつけることになりました。

この選挙結果の前から、マスコミはギリシャという国が如何に狂っているかという事を連日伝えていました。

どのような事が伝えられていたかというと、ギリシャ国民の4分の1が公務員。
その公務員は、平均給与の1.5倍の給料をもらっている。
年金は現役世代の8割を受け取ることが出来る。
こんな状態では財政破綻するのは当たり前。ギリシャは国民を甘やかせ過ぎだ!
というもの。

ニュースやワイドショーのコメンテーターは、このデータをすんなり受け入れて、ギリシャ国民を常識のないキチ○イ扱いしていましたが…
私には、これらの数字を聞かされても、何故ギリシャが叩かれているのか、この数字がどれほど異常なのかが全く分かりませんでした。

これを読まれている方は、『単純にお前の頭が悪いだけだ』とお思いの方も居らっしゃるでしょう。
確かにそれもあるかもしれません。
では、その様にお思いの方に向けて、私がどの部分が理解できなかったのかを説明しましょう。

・公務員が国民の4分の1
・公務員は平均給与の1.5倍受け取っている
・年金受給者は、現役世代の8割の額を年金として受け取れる

この説明の中に、具体的な金額が一切記されていません。
確かに、割合としての数字は書かれています。
しかし、実際に何ユーロのお金を受け取っているのかが全く報道されていません。

といっても、割合は報道されている。
仮に報道されている内容が本当だとした場合、どれか一つの金額がわかれば、全て計算する事が可能。
という事で、【ギリシャ 平均給与】でGoogle先生に訪ねてみました。

ギリシャに旅行に行かれた方が、ギリシャでインタビューしたブログや、ヨーロッパに住んでいる方などの書き込みを観た結果、大体の平均給与が分かりました。
その額は、日本円にして手取りで7万円。

仮に7万円というのが民間企業の給料だった場合、公務員の給料は10万円という事になります。
年金受給者は現役世代の8割の年金が貰えるということなので、民間企業で務めた場合は約5万円。
公務員の場合で8万円という事になります。
現地の物価は安い様ですが、家賃の安い所で3~4万円取られるようです。
という事は、家賃を差し引いた手元に残るお金は…

計算すれば分かりますが、現役世代の人で3~4万円。
公務員で6~7万円。民間出身の年金受給者は1~2万円。公務員出身の年金受給者は4~5万円ということになります。
これは、家賃を差し引いただけの額なので、これとは別に、水道光熱費や食費がかかります。
またギリシャの消費税は23%と日本と比べて高い。
この年金を仮に3割削ると、単純に生活が出来なくなる。

ギリシャ国民が緊縮財政にNO!を突きつけるのも、当然と言えます。

因みにドイツはどうなのかというと、手取りで倍以上の所得となっています。
ギリシャに厳しい人達は、『ドイツは頑張っているんだから当然だ』と主張されるでしょう。
では、ギリシャ人は頑張っていないのか。
私がもしギリシャ人でギリシャに住んでいて、子供がいたと仮定して考えた場合。
子供には一生懸命勉強してもらってドイツの大学に入ってドイツで就職するようにアドバイスするでしょう。
EU内では引っ越しが自由なので、ギリシャで生れてもドイツに移住することが可能です。
ギリシャで一生懸命頑張るぐらいなら、平均給与が2倍以上のドイツで就職したほうが、確実に稼げます。

これはギリシャに限定した話ではなく、EU内の地方の国の優秀な若者は殆ど、一番稼げる国に行こうと思います。
結果としてどうなるのかといえば、ドイツはEU中から集まった優秀な若者の上澄み部分のみを取り去って、いらない部分は捨て去れる。
完全な買い手市場というわけです。
様々な国から優秀な若者が集中するわけですから、新たなビジネスも生まれやすいし、生産性も上昇しやすい。

言い換えればドイツの成長は、EU中の優秀な若者を吸収し続けた結果ともいえます。

『EUが出来る前から、ドイツは発達してたじゃないか!』という主張もあるでしょう。
それはその通りなのですが、これも、ドイツ人が真面目だからという理由だけで発展したわけでは有りません。
ヨーロッパの地図を観てみましょう。


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お分かりの通り、ドイツはヨーロッパのど真ん中に位置します。
デンマークとスエーデンの間は海ですが、そこには橋がかかっている為、スカンジナヴィア半島からも陸路でドイツに行くことが出来る。
正に、ヨーロッパの中心で、立地的には最高です。
ドイツに生産拠点を置けば、EU中に物を販売することが簡単に出来る。
この立地が、主な要因と考えられます。

その一方でギリシャはどうでしょうか。
EUの南東の端で、海を挟んだ向こう側には、シリア・イスラエル等、紛争が起こっている地域があります。
ここに会社の本社を置く企業は、かなり少ないのではないでしょうか。
つまり、ギリシャは立地的にも恵まれていないということです。

これらの事を全て無視して、『ギリシャ人は考えが甘い』と切って捨てるのは如何なものでしょうか。
個人的には、ユーロ脱退を武器にして逆脅ししたくなる気持ちも、解らなくはないんですけどね。