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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

パレートの法則 頑張って2割に入る必要があるのか

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パレートの法則ってありますよね。
別名、8:2の法則と呼ばれているもので、ビジネス関係の話では頻繁に出てきます。

この法則を説明する為に用いられる有名な例としては、働き蟻の行動。
働き蟻は全体が働いているように見えて、実際には全体の2割のアリしか働いていないというもの。
つまり、社会を維持する為に一生懸命尽力しているのは2割で、その他8割はサボっているという話です。

ここで、働いている2割だけを取り出し、別の環境に置いてみるとどうなるのか。
真面目に働いていたアリばかりを集めた集団なので、もっと効率的に生活するのかと思いきや、実際にはその内の8割はサボりだす。
では、真面目な2割を排除された残りの8割の社会は破綻するのかといえば、その内の2割が真面目になるので、結果としては8:2の法則は維持される。


これは、同じように社会的な生活を送っている人間にも当てはまるそうで、それをもっと小さくした組織である会社組織でも当てはまるそうです。
例えば、会社の収益の8割は、2割の人間によって生み出されている。
会社の利益の8割を稼ぐのは、2割の商品郡。

ここで、大抵の浅はかな考えを持つ人は、この様な発言をします。
『アリは動物だから法則に縛られるが、人間は思考できる動物なので、全体の意識を高めてやる気を出させることが出来る』…と。
この様な意見をいう人は、この法則を表面的に知っているだけで、理解はしていないのでしょう。
また、人間以外の動物は馬鹿だから無理だけど、人間様なら出来るという、これまた浅はかな考えも読み取れます。

このパレートの法則は、世の中は一元的なものではなく、様々環境が複雑に重なり合っている事を示しているんです。

仮にもし、全員が同じ思考の元にやる気を出して会社に貢献すればどうなるのか。
結果からいえば、上手く行けば一時的に成功し、その後、数年と持たずに倒産するでしょう。
最悪のケースでは、一度も成功しないまま破綻します。


何故このようになるのか。
それは、単にサボっているだけの存在ではないからです。

簡単にいえば保険です。


分かりやすいように、会社の例をそのまま使って説明してきます。

IT技術が浸透していなかった程昔の仕事は、人間関係の構築がかなり重要でした。
名刺を何枚持っているか、という単純な事も、人脈の広さを示す上では大切なこと。
また、夜に高級クラブに呑みに行くことで、同じ経済レベルの人と知り合う事も仕事の一環でした。
狭い人間関係では、相対比較がしにくい為、中の良い人と取引をするというのも当たり前の行動。
その為、接待によって人間関係を深くする事は当然。

足を使って営業をするというのが仕事の基本でした。

この時代に会社経営をしていたとしましょう。
もし、雇っている営業が全て、一生懸命真面目に仕事をしていた場合。
この時代が永遠につづくのであれば、会社経営は順調に進むでしょう。

しかしこの後、IT革命が起こったとしたらどうでしょう。
自分が抱えている営業は、自分の足で行ける範囲の営業しかしてこなかった。
また仕事が終わった後も、接待で呑みに行ったり、営業トークという名の世間話をする為の情報収集しかしてこなかった人間です。
パソコンを触った経験もないでしょうし、ネットで人とつながるという事に関しては、想像すら出来ないでしょう。

結果として時代に取り残され、衰退して潰れてしまいます。

その一方で2割の人間だけが、その時代で真面目と呼ばれるような営業手段を取っていて、残りの8割は別のことをしていたとしたらどうでしょう。
例えば残りの8割の内の一部が、この時代でコミュ症と呼ばれるような人達で、面と向かってコミュニケーションを取るのは苦手だが、パソコン通信等でネットを通じて人間関係を構築していたとしたら?
IT革命が始まる前の時代では、単に人付き合いが苦手といった評価の人が、革命後にはいきなり最前線で活躍できる人材に早変わりするわけです。
そしてその人達が、社会全体を支える2割になり、今まで社会を回していた2割は8割の方に転落するわけです。

つまり、1方向の見方しかできない人にとっては、2割が真面目で8割がサボっているようにみえる。
しかし実際には、社会がどの様に変化するのが予測できない為、人それぞれが得意とする分野を分散させているだけ。
全員が、ある視点から見れば2割のグループに入り、別の視点から観れば、全員が8割のグループになるわけです。


これは、会社という限定されたコミュニティーの中だけで起こっている現象でもありません。
最近生まれた言葉で、マイルドヤンキーという言葉があります。
地元意識が強く、実際に会える範囲の人間と、濃い関係を築いていく人達です。
今現在は、IT時代に乗り遅れた人達という若干馬鹿にした感じで扱われている人達ですが…
もし、巨大な太陽フレアが生れ、そこから撒き散らされる電磁波によって、電子機器が一夜にして全て潰れてしまったとしたらどうでしょう。

人間関係をIT技術に依存していた人達は、一夜にして無力化され、孤立してしまいます。
しかし、マイルドヤンキーはIT依存度が低いため、今までとさほど変わらない人間関係を維持するでしょう。


人類の知恵では、どの様に、どのタイミングで時代が変わるのかが全く予測出来ない。
予測が出来ないのであれば、どの様に時代が変わろうとも、一部の人間が対応できる状態にしておくことで、人類という種を未来につなぐ為の戦略が、人類におけるパレートの法則なんでしょう。

この法則から学ぶことが有るとすれば、2割に入る為に自分の本心を曲げて努力するより、自分の思う通りに生きれば良いということだけです。
何故なら、頑張って2割に入った所で、次の瞬間に時代が変わるという事が続けば、結局は8割から抜け出せないんですから。
それなら、8割側の人間だと自覚していても、好きな事をやればいい。

上手く行けば、時代の方が自分に追いつくかもしれないのですから。