だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

水平分業化する社会

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昔は、とにかく大きく成る事を追い求めていた各企業ですが、ここに来て、急激に業態を変化させてきました。
具体的には、垂直統合型から水平分業化へのシフトです。

簡単に云うと、今までは設計・デザインから加工・組み立てまでを一貫して一つの会社で行っていました。
しかし、商品開発から製造販売までを一社でやるというのは、大変効率が悪い。
具体的には、固定費が掛かり過ぎるという事。
その為、各メーカーはひとつの部品に特化して開発・製造をし、足りない部品は他のメーカーから買うという方向にシフトしました。

この流れの根底にあるのは、供給過剰でしょう。
それぞれの製造業で生産できる数が、需要を上回っていない状態であれば、作ったものは適正価格で販売が可能です。
しかし、供給過多ではそうはいきません。
大量に製品が余っているだけでなく、製造ラインまで余ってしまう。
簡単にいえば、今まではお金を生み出す金の卵だった人員や設備が、一夜にして金食い虫に化けたようなもの。

人員は確保しているだけで毎月、人件費が発生します。
設備も一緒で、維持しようと思えば定期的にメンテナンスをしなければなりません。
また、機械そのものが高価なものであれば、ローンを払い終えていないということもあるでしょう。
供給過多は、スケールメリットを追い求めて拡大路線を取っていた企業にとってはかなりの痛手。
どんな仕事でも、受けなければ現状を維持できない状態になってしまった。
例えそれが、ライバルメーカーの部品の製造であっても。

こういう状態になった際に、一番有利なのが、何も持たない機動力のある企業です。
具体的には、アイデアと発信力がある企業。
例えばアップルなどは、その典型例ですよね。
アップルは部品メーカーから部品を買い付け、それを組み立てメーカーに渡して製品に仕上げる。
つまり、製品を作る工場というものは持っていない。
あるのは、製品を生み出すためのアイデアと、売る為のプレゼンです。


この方式の会社は、先程も書きましたが、機動力が凄い。
大企業は抱えている人数の多さと設備の関係で、取れる選択肢が限定されています。
しかし、アイデア以外何も持たない企業は、選択肢が無数に存在します。
また、初期投資も少なく、最大損失が発注した製品代のみのため、リスクも少ない。

この水平分業化が限界まで進んだのが、ノマドと呼ばれるワークスタイルでしょう。
今まで説明してきたのは企業間の取引についてでした。
しかしIT技術が進み、PCやスマホ等の家庭にある設備で、個人で会社並みのパフォーマンスが出せる場合は、そもそも組織に所属すること自体が必要無くなります。
個人でアイデアが出せて魅力的な製品が生み出せるのであれば、その製品を形にしてくれる工場は山程ある。
後は発注し、商品を流通させれば、個人で会社経営が可能となります。
流通は、Amazonなどのネット通販を利用してもよいでしょうし、個人で経営しているような営業代行を利用してもよい。

簡単にいえば、今までは大きな組織の中に有った、企画部・営業部・工場といったものが全て独立し、バラバラの企業になった。
つまり、水平分業化したわけです。
今まで一つの組織内に有った場合は、ひとつの製品を生み出す為に、話し合いが必要になりました。
企画部が企画をしたとしても、営業が『こんな製品は売れない』を文句をいえば、修正をしなければならなかった。
企画部と営業部が良いと思った製品でも、工場に設備がなければ作れない。
結果として、製品が出来上がる為にかなりの時間が必要となっていました。

しかし、水平分業化された社会では、その様なすり合わせが余り要らない。
というのも、商品企画をした人が工場に発注した時点で、その商品は企画者に販売される為、工場としては受注価格以外の文句はない。
商品化されたものをAmazonで販売する際も、Amazonはいちいち製品の文句は言わないでしょう。

つまりこの場合、企画会社が金銭的な責任を取る事が明確になっている為、文句が出づらい状況になります。
文句が出なければ、当然打ち合わせの回数も減り、次々に製品を打ち出すことが出来る。
結果として機動力が高まる。


これは、今までの構造が完全に反転したということです。
昔は、学校の勉強を頑張って成績上位に上り詰め、大組織に入れば安定は得られました。
しかし今は、企業に売り込む技術を持つ人間が単独で行動する方が優位になりつつある。
この流れは一時的なものではなく、今後も続いていく流れでしょう。

今、進むべき道を考えている方は、他の人が持たない知識や技術を修得する方向にシフトした方が、生きやすくなるのではないでしょうか。