だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

スリム化を迫られる大企業

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今回は、今世界中で起こっているデフレ構造を、時代の流れから考察していきます。


社会の形態というものは、その環境に合わせて変化していきます。
今までは、スケールメリットによる利益を得る為に、会社を巨大化させる事が良いとされてきました。
その為、会社を成長させる為には、とにかく社員の数を確保する事が重要な課題でした。

この様にスケールメリットを追い求める時代は、会社が成長するためには人材が必要となる為、各企業による人材の獲得競争が起こる。
人材の獲得競争が起こると、当然ながら労働市場での人の価値は上昇するので、労働環境の改善が行われる。
良いとされるインフレの必要条件は人件費の向上。
その為、スケールメリットを追いかけていた時代というのは、企業の成長がそのまま景気の回復や生活水準の上昇につながっていました。

しかしその時代も、IT革命以降は変化せざるを得ませんでした。

IT革命は、一人あたりの生産性を劇的に上昇させました。
これが何を意味するのかというと、市場のシェアを取る為に、大量の人材が必要ないということです。
少ない人数であってもIT技術を使いこなす事で、今まで以上の生産を行うことが出来る。
この環境によって企業内に抱える人材が、一瞬にして固定費を消費するだけの負債に成り果てたのです。

利益を伸ばすことが至上命題の企業としては、IT技術を使って合理化する方が正解。
もし時代に逆らい、古い態勢で頑張ろうとしても、相手は待ってくれない。
新規で立ち上がる企業はIT技術をフル活用して勝負を仕掛けてくるので、劣勢に立たされる。

それを放置し続けると、いずれは衰退し淘汰される。


つまりどういうことかというと、今までは利点だったものが反転し、足枷になってしまったという事です。
その足枷を付けた状態で戦う決意をしても、他の企業も同調して足枷を付けるわけではない。

この様な状態での競争は、ハンデを付けて行っている様なもの。
ハンデを与えても戦える程の製品を作っているのであれば問題はないが、特にその様な武器もない場合は、最悪の場合、淘汰される。
それを避けようと思うと、大企業はスリム化を迫られる。

人材を大量に抱えている企業がスリム化すればどうなるのか。
これは簡単な話で、労働市場に大量の人材が提供されることになります。
労働市場というのも他の市場と等しく、需給関係で相場が決まります。

つまり、応募する人数に対して募集する人数が上回っていれば、労働単価は上昇。
逆の状態になれば、当然、単価は下落します。

この労働市場に大量の人材が供給されるとどうなるのかといえば、供給過多で賃金は減少します。
結果として、スリム化を推し進めた企業の業績は上昇するが、その一方で労働単価は下がる。

これを踏まえて今の経済を見てみると、どうでしょう。
日本に限らずアメリカでも、一部企業の業績は回復し、株価は上昇して高値をつけています。
その一方で労働単価は減少し、市民の立場からみると、景気回復が実感できない状態になっています。


極端な言い方をすれば、産業革命によって単純労働者の労働が機械に奪われたのと同じ。
IT革命によって、ホワイトカラーの労働が計算機に奪われたのです。

この様な書き方をすれば、ネット技術が発展した事そのものが害悪だと捉える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしハッキリ言っておきますが、それは誤解です。

ネットの普及によって情報格差は減少し、より暮らしやすくなったのは事実です。
産業革命も、起こった当初は労働者から仕事とを奪うと批判されたことも有りましたが、時代はこの環境に対応し、人々の職は製造業からサービス業・アイデアを生み出すといった別の方向にシフトしました。
IT革命によって、これから同じ様な事が起こるでしょう。
重要な事は、この変化を認識し、時代に対応出来るような体質に自らが変わる事です。
IT技術が進むことで、この世から無くなる職業というものは確実に存在します。
その職業を見極め、これから何が必要とされるのかを考えなければ、この先、生き抜くのは難しいのではないでしょうか。