だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

何度も そしてこれからも繰り返すギリシャ危機

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今回は、少し前に騒がれていた、ギリシャが財政難からEUを脱退するかもしれない状態について、考えていきます。

朝夕のニュースやワイドショーだけを観ていると、ギリシャ人が働かないとか、公務員が多過ぎるといった感じで、窮地に陥ったのは自業自得の様な報道をしているのをよく聴きます。
そして、『借金をなかったコトにしろ』というギリシャの要求を子供の駄々の様に報じ、ギリシャの非常識さを印象づけています。

しかしよくよく考えると、ギリシャだけが悪いというよりも、EUそのものに問題があるんですよね。

EUは、細かい国に分かれていた国を一つにまとめて、1つの大きな枠組をつくろうという考えを元に作られました。
そして最初の段階として、通貨ユーロをつくり、加盟国の通貨を統一しました。
ちなみにですが、EU加盟とユーロ加盟は別で、EUには加盟しているけど、ユーロは導入していないという国も存在します。
イギリスはEU加盟国ですが、通貨はポンドを使用してます。

これらの動きにより、EU内での生活は、大きく変わりました。
まずは通貨についてですが、ユーロ導入国では、今までは隣の国で買物をする際に、通貨を両替しなければなりませんでした。
両替の際には手数料が発生する為、色んな国で買物をする場合、手数料だけで結構なお金が取られていたようです。
しかし、ユーロ導入によって、この問題は解決。
両替すること無く、加盟国で有れば何処の国でも買い物ができるようになりました。

次にEU加盟ですが、この枠組に加盟することにより、EU内の人は自由に引っ越しが出来るようになり、加盟国同士であればパスポート無しで国を行き来することが可能になりました。
一見すると、人々の暮らしはより便利になった様に思えます。

しかし実際には、この事で生まれた問題というのもあるわけです。
その象徴が、ギリシャ問題。


考えても観て下さい
元々別々の国で、行き来出来なかったものが、その制約が外れて自由になるという事がどういう事態を引き起こすのか。

日本という国で考えてみましょう。
産業という観点からみると、中心地が大都市圏に集中し、地方経済は疲弊していっています。
これは、地方から学生などの若い世代が大都市圏に流入し、人口が集中する事とによって引き起こっている問題です。
全体としてみると、人口は均一にした方が良いのでしょうが、学生から見てみると、企業数も多くて賃金も高い大都市圏に移り住みたいと思うのは、当然のことでしょう。

結果、地方から柔軟な思考が出来る若者や労働力が吸い上げられて、地方が疲弊してしまう。
これと同じことが、ヨーロッパで引き起こっているのがギリシャ問題です。

マスコミはギリシャ政府に問題があるといいますが、ギリシャの若者からすると、勉強して優秀な成績を得ることが出来たなら、より高賃金の企業で働きたいと思うのは当然の欲求です。
つまり、日本の地方の若者が東京・大阪等に行くのと同じように、ギリシャの優秀な若者はドイツに移り住みます。
若者がドイツに流入すると、当然の様にドイツは活気づきますが、その一方で若者の流出が止まらない周辺国は疲弊していく。
主な産業が観光しか無い様なギリシャは特に影響を受けます。

また、人口の移動は物の消費量にも影響を与え、それが更に生産効率、物価へと波及しているようです。
私は先日、スウェーデンの学生と話す機会が有りましたが、その学生によると、ドイツは酒が物凄く安い為、スウェーデンからドイツまで買い出しに行くそうです。
スウェーデンから海を渡ってドイツに?』と思われる方もいらっしゃるでしょうが、日本でいうと本州から橋をわたって四国に行くような感覚。
具体的には、その学生の実家から、車で僅か4時間でドイツまで行ける為、日本で言えば関西→東京間の半分ぐらいの手間でいけます。

これが何をしているのかといえば、ドイツまで車で4時間程度で行ける程度の距離にある隣国の人達は、皆ドイツに買い出しに行くということです。
この流れにより、ドイツは物の消費量が増える為、商品の量産体制を取りやすい。
当然、効率化も図れる為、より安い品物を大量に供給できるようになる。
逆に隣国は顧客を奪われる為、物が売れずに生産効率は下がり、ドイツに競争力で負けてしまう。

この流れの代表的なものが、ギリシャ問題です。

先程は、日本の都市圏と地方を例に挙げて説明しましたが、ギリシャが問題になって日本の問題がここまで深刻で無いのには、理由があります。
それが、地方交付税
日本の場合は、稼ぐ能力のある東京から税金を吸い上げ、地方に分配するという制度があります。

その一方でEUはどうでしょう。
ドイツが周辺国から若者を吸収して金を稼いでいますが、それはEU内に適正に再分配されているのなら問題はありません。
しかしされてなかったとしたら、どうでしょう。
財政破綻する国が出てくるのは当たり前です。
日本でも、地方交付税を辞めた途端に破綻する自治体が続出するでしょう。

この問題は、ギリシャの怠慢というよりは、EUという枠組みだけ作って、国自体がバラバラの状態である事が問題では無いでしょうか。