だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【映画感想】 恋の渦

今回は、Netflixで見つけた映画『恋の渦』を観て思ったことについて書いていきます。
若干ネタバレを含みますので、まだ観ていなくて興味がある方は、先に観てから読まれる事をお勧めします。

この作品は、何かのラジオで発言された『愛の渦』というタイトルを『恋の渦』と聞き間違えて観てしまった作品です。
結果から書くと、作品を観だした直後の感想と、観終えた時の感想がかなり変わる不思議な作品でした。
最初は嫌悪感しか無かったのですが、ストーリーが進んでいくとドンドン引きこまれ、最終的にはちょっとしたカタルシスが得られます。
しかしその後、映画内の人間関係や各キャラクターの正確などを深く掘り下げていくと、ちょっとした恐怖も感じるような、複雑な感情が沸き起こりました。

この作品を簡単に説明すると、最初に登場人物が全員揃って、ホームパーティーを開催します。
イベント開催の名目は、冴えない男友達に女を紹介するというもので、これも友達思いの人達が真剣に開催したというよりも、集まる名目・ネタ的に利用しているという感じ。
そして、その場に集まる人間なんですが…
全員DQN属性の人で、私が最も忌み嫌うタイプの人達なんです。



その人達が集まってパーティーを行うのですが、特に中身があるわけでも無く、一体感があるわけでもない。
ふんぞり返って偉そうにしている奴や、空気を読まずに自分一人で大はしゃぎして空回りしている奴。
それらが、ただただ自分勝手に振る舞い、名目となっている『友達に女性を紹介する』というのも途中からどうでも良くなり、『ウェ~イ』って感じで盛り上がって終了。
この時点で、視聴終了したい気持ちでイッパイになりましたが、見続ければ物語が面白く転がっていくかもしれないと思い、何とか観続けるというのが最初の印象でした。

メインの物語は、このパーティーに参加した人間の、その後を追いかけるという感じで進んでいきます。
日常生活を通して、その人物の性格に焦点を当てるという感じでしょうか。
この部分が、それぞれの人者の評価が二転三転してかなり引きこまれます。

引き込まれるとはいっても、人間的に深いのかというと、そうでもありません。
ビジュアルだけを追い求めている女は、性欲を満たす為に体だけを求める男に惹かれますし、皆から馬鹿にされている男は、自分が偉そうにできるモテそうにない女ととりあえず付き合う。
根拠の無い自身を振りかざすDVっ気のある男は、無能な女と付き合っている。

『映画を見終わった後は、皆お似合いカップルだったんだなぁ』という妙な納得感と、『こういう人達は皆不幸になるんだな』というちょっとしたカタルシスを得られて、『僕は、あんな人達には近づかないでおこう』なんて気分にもなったのですが…
この映画、ここだけでは終わらないんです。
その後も、心に色んな感情が湧いてくるんですよ。

例えば、私が映画を観た直後に沸き起こった、『こういう人達は皆不幸になるんだな』『僕は、あんな人達には近づかないでおこう』という感情。
この感情は、このカテゴリーの人達を無意識に見下していたことから出てきた感情です。
見下し、心理的に距離をとっていたからこそ抱いた思いなんですが、この映画の恐怖は、DQNというフィルターを取って映画と向き合った時に感じ取ることが出来ます。

そして直ぐに、ここで語られている人間関係は、一部の特有の人達だけのものではなく、全ての人達に当てはまることに気がつくんです。
そういう視点を手に入れてから観ると、かなり興味深い映画となりました。

例えば、オラついた俺様系のDVっ気のある『コウジ』と『トモコ』というカップルが登場します。
このカップルの関係が、かなり面白いんです。
コウジは、DVっ気が有ると書きましたが、女性に直接暴力を振るうという行為は一切しません。但し、ネチネチと長時間に渡って説教をするんです。
では女性はどのような性格かというと、いわれればある程度のことはやってくれるという人間。言えばやってくれるんだから、良い娘の様にも思えます。
しかしコウジは、トモコの取る行動をイチイチ指摘し、長時間にわたって文句を言い続けます。

この様な男性を観て、『嫌な男!』と思う女性陣は多いと思います。
しかし、丁寧に映画を観ていくと、男性をこの様な性格に変えたのは女性であることに気が付きます。

トモコは確かに、言ったことはやってくれます。しかし裏を返せば、言わないとやらないんです。
少し考えるだけで分かることも、言われない限り絶対にやりません。
例えば、コウジが留守中に女友達(カオリ)が遊びに来て、そのカオリを狙っている男(タカシ)が『カオリと連絡が取れないから、今、トモコの家にいるなら会いに行くね』と言って押しかけてきます。
しかしカオリは、タカシに会いたくないため、タカシが来る前に帰ってしまいます。それから遅れてタカシがトモコの家(コウジと同棲中)に行くのですが、何故か家にあげて二人っきりで長時間話します。
ちなみにタカシは、最初のパーティーの時に彼氏の目の前でトモコの手をずっと握りながら喋る様な空気の読めない人間。

タカシの目的であるカオリは家を出たのだから、その事を告げて追い返せば問題はないのに、何故か家に迎え入れて男女二人で長時間過ごす。
この様な事をされると、特に嫉妬深い人間でなくても、いい気はしないでしょう。
何故、トモコがその様な行動をとったかというと、『するな』と言われていなかったから。自分の行動によって彼氏がどんな感情を抱くかということは一切、考えません。

こんな調子で、トモコは自分で考えることは一切せず、『やるな』と注意されない行動は何も考えずに行います。
こういう人を相手にした場合、人はどんな行動をとってしまうのでしょうか。
カップルで考えるのがピンと来ない場合、貴方が勤めている職場に配属された部下が、同じ様な事をしたと考えてみてください。

部下は、支持した事はやるが、自分で考えて行動することは一切しない。
『この状況の場合、少し考えれば、取るべき行動は分かるよね?』と説教しても、『すみません』『ごめんなさい』を連呼するだけで、翌日…いや、短い場合では数時間後に全く同じ過ちを犯す。
こういう状況になった場合、『さっきも注意したよね。 すみませんて言ったよね?』と詰め寄っても、再び『すみません』『ごめんなさい』を連呼するだけで、また同じ失敗をする。
こんな状態が数年続くと、『君、毎日の様に「すみません」って謝ってるけど、何を理解したの?何について謝ってるの? あの時も、あのケースも…』と言いたくならないでしょうか。

ここに登場するカップルも同様で、トモコの方は謝るだけで、根本的な改善をしようとは一切思っていない…というか、何が問題で注意されているかが全く理解できない無能な人間。
男性の方は、女性には手をあげられないし、一緒にいたけど、その為には改善して欲しいから、毎日ネチネチと文句を言っているという状態の無限地獄。
男女の価値観が決定的に違う為、別れることが最善の道なんでしょうけども、愛情やら承認欲求やら色んな物が複雑に絡み合って、別れることすら出来ないという現状が書かれていたりします。

他のカップルのケースでも、よくよく考えると身近で当てはまるケースが結構有り、『恐いなぁ』と思える事柄スが映しだされていて、観た後、かなり考えさせられました。
Netflixでいつでも見れる為、興味が有る方は、観てみては如何でしょうか。