だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

不動産投資のリスクについて考える (後編)

今回の投稿は前回の続きとなっています。
まだ読まれていない方は、そちらから読んでいただければ幸いです。
kimniy8.hatenablog.com

前回の投稿を簡単に振り返ると、『世間に溢れている不動産投資関連の広告は、メリットだけが過剰に宣伝されていて、リスクが考慮されていませんよ』という内容でした。
宣伝文句通りに確実に儲かるのであれば、わざわざコストをかけて一般人に知らせて投資を募らず、不動産業者が自ら投資を行いますもんね。
という事で今回は、無視されがちなデメリットを考慮した上で、不動産投資について考えていきます。

前回紹介した不動産投資の条件としては
・不動産の運用利回りは6~7%
・土地は業者が独自のネットワークを駆使して好立地で一般の不動産市場に出回っていない掘り出し物を紹介してくれる
・お金がない場合、土地取得と建設費用の全額を貸し付けてくれる金融機関を紹介してくれる
こんな感じの、至れり尽くせりのプランでした。
これを信じるのであれば、20年程度で家賃収入だけで借入金を完済できる計算になります。
20年で家賃収入を生み出してくれる物件が実質無料で手に入るのであれば、誰だってやりたいですよね?

この情報に欠けているのが、不動産投資のリスクです。
では、不動産投資にはどんなリスクがあるのでしょうか。
順を追ってみてみましょう。

1.空室リスク
不動産投資は、自分が所有する物件を他人に貸すことで利益をえるわけですが、借りる人がいなければ収入は有りません。
1棟10戸のアパートで、空室が3室の場合は、収入は3割減となってしまいます。
新築の場合は、部屋が綺麗ということも有って空室率は低く抑えられると思いますが、年数が経てば経つほど条件は悪化するわけですから、空室率は上昇してしまいがちです。

2.家賃引き下げによる収入源。
先程も書きましたが、新築であれば強気の家賃でも入居者を確保できる可能性は有りますが、年数が経てば経つほど建物は老朽化していって入居者を確保するのが難しくなります。
同じ条件の圏内に新たな賃貸マンション・アパートが建てば、客はそちらに流れるわけですから、それらと勝負するためには、家賃を引き下げる必要が出てきます。

これだけを考えても分かりますが、長期的に6~7%の運用利回りを確保するのは、かなりの努力が必要でしょう。
経年劣化などを考えると、収入は年々減少することを考慮する必要があります。
最初の条件では20年程度で完済できると書きましたが、これを考慮すると、完済までの期間は更に伸びる可能性も考えておくべきでしょう。

3.不動産の管理費用です。
不動産投資は、貸したらそれで終わりというわけでは有りません。
住民たちは、何かトラブルがあると大家を頼ってくるわけですから、それらに対処していく必要があります。
この管理を不動産業者に任せる場合は、管理手数料を支払わなくてはなりません。
当然のことですが、手数料分、利益は圧迫されることになります。
『不動産管理会社に手数料を支払いたくないので、自分で管理をする!』って人もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際に知り合いで大家をされている方に話を聴いた所、共有スペースの掃除や各トラブルへの対処等を全て自分で行うのであれば、他の仕事の片手間で出来る程、生易しいものではないらしいです。
それこそ、大家業としてやらなければならないようで、拘束時間もそれなりにあるようです。

こうなってくると、話は変わってきますよね。
大家業で拘束されている時間を他の仕事に充てた場合、どれだけ稼げるのかという計算が必要になってきます。

4.対人トラブル
入ってくる入居者がみんな善人で、支払日に確実に家賃を支払ってくれる人ばかりとは限りません。
私が以前、観に行ったトークライブで、『家賃滞納100ヶ月!』と語っている芸人の方がいらっしゃいました。
これが本当のことなのかは知りませんが、この様なトラブルも想定しておく必要があります。
また、トラブルメーカーが入居してきて、周りに迷惑をかけまくるなんて事もあるかもしれません。
こうなると、自身の物件の空室率にも響いてきますね。

5.修繕費
建物というのは実態が有るので、何か有った際に壊れることがあります。
当然、これを修理しないと、ただでさえ毎年下がる物件価値が更に下がる事になりますし、新規入居者を募る際の家賃にも響いてきます。
ただ、修理するには修繕費という経費がかかりますし、災害を予想して保険に入ると、保険料によって利益は更に圧迫されてしまいます。

6.出口戦略
投資は、最終的にどれほどのお金が手元に残っているかで、成功か失敗かが別れます。
例えば債権などは、利率は非常に低いのにもかかわらず人気が高いのは、償還日まで保有していれば、元本がそのまま返ってくるからです。
金などの商品・株などの証券投資などは、元本保証では有りませんが、取引市場が整備されている上、販売されているものに統一感が有る為、売却するのは比較的簡単です。
ソニーの100株は、どの地域の誰が持っていたとしてもソニー株100株以上の価値はなく、金は何処の国の人がが保有していたとしても、提示額の価値しかない)

しかし不動産はどうでしょう。35年ローンが終わり借金も返済した後、その物件を売却しようとしたとします。
その立地の不動産はこの世で一つですし、適正な値段がいくらなのかが不透明です。
周囲の環境と比べて参考価格を出すことは出来ますが、全く同じ立地の土地がない以上、参考でしか有りません。
その為、不動産市場が整備されていたとしても、売れる時期も売却価格も予想がつきにくいです。
また、貴方が売却しようと思っている土地に立っているのは、築35年の老朽化した賃貸物件です。
35年経過した住宅は、日本の場合は資産価値が有りません。
では土地の価格のみでの販売になるのかといえば、そうでも無い。
その土地を購入した人が、そのボロ物件で賃貸業をする為に購入するならまだしも、別の用途で使用する場合は、物件を取り壊す必要があります。
購入してから自身で取り壊すと解体費用分が割高になる為、購入者が余程その土地に執着してないかぎり、更地を購入したほうがマシという事になります。
こうなると、解体費用分を値引きして売却希望額を出す必要も出てきます。

また今の時代、更に気をつけなければならないのが、35年後の不動産市場でしょう。
日本では少子化と東京一極集中が進んでいるため、地方都市の入居希望社や不動産購入者は激減していると予測されます。
その市場で自分が満足する値段で賃貸・売却できるのかという問題があります。

以上のことを考慮すると、不動産投資というのは商品や証券投資の様なものとは違い、賃貸業者の経営者になる事と同意とも考えられます。
賃貸業の経営者となって35年も働いて、結果的に1000万程度の利益を得たとしても、年換算で考えると年収30万円弱となります。
仮に倍儲かったとしても、年60万円。
これが割に合うのかという話ですね。

ここまで苦労し大きなリスクを抱え、この程度の利益しか手に出来ないのであれば、適当な土地を見つけて欲の皮が突っ張った馬鹿に転売する方がよほど効率が良い。
その土地にアパートを建設し、建設費をピンハネ出来れば、更に効率良く低リスクで儲けることが出来る。
これで分かりましたよね。不動産会社がわざわざ高額なTV広告費を支払ってまで、不動産投資を勧めてくる理由が。

…と、今回はリスクを重点的に書きましたが、不動産投資は経営なので、経営手腕が有れば儲けることも可能でしょう。
ただ、少子化で人口減が分かっている今の地合いでは、経営手腕があるのであれば不動産以外の他の事業を始めるほうが、まだ稼ぎやすいような気もしますけどね。