だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

不動産投資のリスクについて考える (前編)

ここ最近、私の済む地域では、またマンション建設が始まりました。
徒歩圏内で既に4棟の建設が行われ、少し落ち着いてきたところでのマンション建設。
ここまで大量に建設して、本当に大丈夫なのかと家主を心配してしまう程です。

という事で今回は、前にも少し書いたことが有りますが、不動産投資について今一度、考えていきます。

この様なマンションラッシュは、私の住む地域だけでなく、全国的に起こっているようです。
建設ラッシュはいつから始まったのか。記憶を辿ると、東北地震だったように思います。
地震津波で多くの家屋が倒壊し、復興需要が盛り上がっている時に政権交代が起こり、安倍政権に変わってからは建設関連の公共事業が更に増え、建設会社の供給のキャパを超えてしまって建設費が高騰。
それに追い打ちを書けるように東京オリンピックが決定し、それに伴う建設需要が重なって、住宅の建設コストが更に高騰。

もともと建設計画を進めていた人達は、これらの事が起こる前は買い手市場の為、ゆっくりと計画を進めていたが、一気に建設コストが上昇した為、建設コストが上昇しきる前に慌てて発注したというところでしょうか。
市場って、本当に面白いですね。
直ぐに手に入ると思っている間は、じっくり検討しようと思うけど、いざ価格が上昇してしまうと、冷静な判断を失って我先にと飛びついてしまう。
政府がインフレを狙っているのも、この様な動きが建設だけでなく全ての消費市場に拡大することを狙ってのことなんでしょうね。

不動産業界も、ここぞとばかりに『土地や頭金が無くても、今直ぐ始められるマンション経営!』『家賃保証で安定した収益を!』なんて聞こえの良いCMを打ちまくり、ここぞとばかりに稼ごうと必死ですね。
そういう広告を目にした欲の皮が突っ張った人達は、儲けたい一心で我先にと不動産屋に向かってしまうかもしれませんが…

その前に深呼吸をし、少し冷静になって考えてみましょう。
冷静さを欠く判断というのは、多くの場合は失敗する可能性が高いんです。
それが、自分の知らない分野の話となると、尚更です。

まず一つ、冷静になって考えて欲しいのが、『不動産業界は何故、儲け話を、わざわざ広告料金を支払ってまで一般の人に伝えようとしているのか。』という事です。
もし仮に、貴方が確実に100万円設ける方法を編み出した場合、その方法を、広告料金を支払ってまで他の人に教えようとするでしょうか?
普通の人間であれば、その儲ける方法を自分一人で実行するはずです。
その方法は儲けが独占できず、且つ、数人がその手法を真似した程度では自分の儲けに影響が出ない場合は、他人には教えないという確約を得た上で仲の良い友達に教えるなり、それなりのお金を授業料という形で貰うなりして教えるのではないでしょうか。

しかし不動産は、親切丁寧に、『土地や頭金が無くても、不動産投資は出来るんですよ!』と多額のお金を広告費として使ってまで、私たちに教えてくれています。

その広告の情報を元にサイトを訪れてみると、本当に至れり尽くせり状態。
なんでも、駅近くの非常に良い立地の土地を紹介してくれて、その土地に物件まで建ててくれる。
しかもこの土地は、一般的な不動産市場に出回っていない、掘り出し物と言っても良い程の好条件の土地。

物件取得の為の頭金がなくても、建設費と土地の取得費用を貸してくれる、金融機関まで紹介してくれる。
全額借金で購入したとしても、借入金は安い場合で1%台で35年ローン。
その一方で、この不動産会社が推薦する土地にアパートを建設すると、6~7%の家賃収入が入る為、差額として5~6%も手にすることが出来る。
少なくとも20年程度で、家賃収入だけでローンを完済できてしまう。
正に、夢の様なプランです。

自分に何の資産も無くても、20年で土地とアパートが実質無料で手に入り、その後の家賃収入は全額、自分のもの。
こんな素敵なプランを広告費を出してまで一般人に教えてくれる不動産会社は、なんて素敵な会社でしょう!!
例えるなら、見ず知らずの人が不意に現れて、『貴方に高級料理をごちそうしますよ。』と貴方を誘い、高級料理店に連れて行ってくれた上に料理を取り皿に分けてくれて、一口サイズにした料理を箸でつまんで口まで運んでくれる様なものです。
こんなにも美味しい話が、あって良いのでしょうか。

皆がこんなにも他人のことを考えて動いてくれるなら、こんなにも素晴らしいことは有りません。
この動きが全世界に広がれば、世の中はもっと暮らしやすい世の中になるでしょう。
しかし世の中は、こんなにも美しいものでは有りません。

美味しい話には裏があるのが世の常です。

この話を冷静に考えてみましょう。
仮に、何年にも渡って安定的に6~7%も稼ぎだす、好立地の土地が有ったとします。
しかもその土地は、不動産市場にも出回っていないような、自分達が見つけ出した掘り出し物。
今すぐに購入するだけの資金がなかったとしても、今の金余りの超低金利の世の中では、担保さえあれば資金調達は容易に出来る状態。
ここまで条件が揃っているのであれば、業者は自分達で購入して運用するのではないでしょうか。

それをわざわざ高額なTV広告を出して他人に進めるということは、実際に運用を行ったとしても、リターンに対して充分なメリットが得られないと考えているからでしょう。

しかし変ですよね。
条件を見る限り、どう考えても儲かることしか考えられないのに、何故なのか。
答えは簡単で、この条件は希望的観測に過ぎず、且つ、デメリットやリスクを無かった事にしているからです。

私は以前、不動産会社で営業をしている人間に話を聴いたことが有りましたが、『聞かれない限り不利になることは言わないので、スマホを持たない老人は良いカモだ。』と言っておりました。
その際、私が『専門家で助言するはずの業者が騙しにかかると、消費者は抵抗できなくて大変だね』とツッコミを入れると、声を荒げて怒鳴られてしまった記憶があります。
当然、そんな人間とはソレっきりですけどね。

このことからも分かる通り、業者はメリットだけを過剰に宣伝し、デメリットは聞かれない限り、極力、伝えないんです。
都合の良い情報で相手の頭を一杯にし、夢の様なビジョンを勝手に妄想させる。
これは一種の情報操作で、洗脳の基本ですよね。

こうなった客は、まだ手にしていない利益の使いみちを考えるのに必死で、リスクの方に目が行かず、契約してしまうというわけです。
では具体的に、不動産投資にはどんなリスクがあるのかを考えていこうと思うのですが…
結構長くなってしまったので、続きはまた次回という事で。